ブロックチェーンの最新技術

ブロックチェーンの最新技術

遂にブロックチェーンで宅配を安全に受け取れる時代に

 ソフトウエア開発のセゾン情報システムズGMOインターネットなどと共同で、分散台帳技術「ブロックチェーン」を活用した宅配ボックスのシステムを開発した。宅配ボックスの開閉制御にブロックチェーンを使うことで、荷物を安全・確実にやりとりできる。2018年の実用化を予定している。
 インターネット通販の拡大による宅配便の取扱量の増加で、宅配ボックスの需要が伸びている。本人が不在でも荷物を届けられるため、再配達の手間を減らせる。一方、従来の宅配ボックスには暗証番号を忘れたり、カードキーを紛失したりするリスクがある。暗証番号を盗み見され、盗難に遭う可能性もある。
 セゾン情報は仮想通貨の基盤技術のブロックチェーンを使い、配達先として指定された人物だけが荷物を受けとれる仕組みを開発した。運送事業者と宅配サービスの利用者はスマートフォンスマホ)の専用アプリでボックスに出し入れする。
 まず、運送事業者がアプリにログインすると、利用可能なボックスの番号が表示される。ボックスに荷物を入れて扉を閉めたあと、配達先として登録されている利用者をアプリで指定して施錠を要求すると、ブロックチェーンに納入情報が記録されて鍵がかかる。
 すると配達完了のメールが利用者のスマホに送信される。利用者が自宅などに着いたらアプリにログインし、荷物が入っているボックスの番号を選択して扉を開ける。荷物を取りだすと、ブロックチェーンに受領情報が記録される。
 ブロックチェーンにはボックスの開閉履歴や施錠・解錠要求といった情報が改ざんできない状態で記録される。デジタルの鍵は利用者しか持っていないため、別人はボックスを開けられない。誰がいつ、施錠・解錠したのかもはっきりと分かることから、荷物が届かないトラブルが起きても、どこに問題があったかを分析できる。
 GMOインターネットが提供するクラウド型のブロックチェーン基盤にシステムを構築し、2016年12月と17年5~6月の2回、実証実験を実施した。セゾン情報の流通・ITソリューション事業部の久井康史事業部長は「今秋には運送事業者や宅配ボックスメーカーも加えた実験を計画している」と話す。
 外部のシステムと連携できる仕様「API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)」で運送事業者や宅配ボックスメーカーなどに提供する。既存の配送システムや宅配ボックスにAPIを組み込み、ブロックチェーンに対応させることもできる。
 セゾン情報はシステムを課金や決済などのサービスと連携させる仕組みも用意する。例えば、荷物を受け取ったタイミングで自動課金する着払い方式の宅配ボックスを設置できる。「当社が流通システムの開発で培ったノウハウを生かし、パートナーづくりを進める」(久井氏)
 同社はこれらの取り組みを推進するため、7月にブロックチェーンを研究開発する横断組織「ブロックチェーンラボ」を立ちあげた。ほかのITサービス会社もブロックチェーンを活用したサービスの開発に力を入れており、様々な分野に広がりそうだ。(中島募)